ワークプランニング
コンサルティングに不可欠な仕事の最適資源配分


 実行すべき業務に優先順位をつけ、誰がいつまでに実行するのかを明文化する
それが、コンサルタントが最初に学ぶスキル、ワークプランニングだ。
これを実践することで、質の高いアウトプットを実現するだけでなく、
キャリアアップのベースとなり、さらにはクオリティ・オブ・ライフの向上にもつながる。

短期間で高いアウトプットを出すコアスキル

現在勤めるA.T.カーニーは、私にとって3社目のコンサルティング・ファームである。私が経験した3社で、新入社員を対象に必ず実施していたトレーニングに「ワークプランニング」がある。

コンサルティング・プロジェクトを行っていると、クライアントの方からチームに「これほど短期間でこれだけのアウトプットを出してもらい感謝している」一緒に働いていて、そのスピード感に圧倒される」といったお褒めの言葉を頂戴することが多い。私自身が事業会社で経験したスピード感と比べると、確かにコンサルタントは短期間でインパクトのあるアウトプットを出していると思うが、そこにはワークプランニングによる最適な資源配分が大きく寄与していると考えている。

ワークプランニングとは、文字どおり「ワークプラン」を立てること。つまり、実行すべき業務を、どのような優先順位で、誰がいつまでに実施するかを明文化したものである。ここで言うワークプランは、プロジェクト全体のワークプランから個人レベルの日々のワークプランまで、さまざまなレベルを含んでいる。たとえば、読者の皆さんがマーケティング部門あるいは営業部門に所属していたとしよう。会社には年次の計画・目標があり、それは各部署の年次のマーケティング計画、営業計画に落とし込まれているだろう。それもある意味ワークプランである。

本稿では、コンサルティング・プロジェクトを進める際のワークプランニングの考え方をベースに、読者の皆さんの日々の業務にワークプランニングをどのように生かせるか、今後のキャリアにどのような意味合いがあるか、考えてみたい。

ワークプランの重要性

コンサルティング・ファームがクライアントにプロジェクトを提案するときの内容には、プロジェクト・アプローチとアウトプット、主な論点と仮説、作業内容とスケジュール、チーム体制などが含まれる。プロジェクトのスケジュールやチーム体制を検討する際のポイントとしては、アウトプットを出すために必要な作業にはどのようなものがあり、必要な工数はどの程度か、どのような人員を配置することで求められるアウトプットを出せるか、に集約される。

コンサルティング・ファームとしてベストなチームを組むために、業界とクライアントに対する知見、課題解決に必要な経験・専門知識・スキルの2つの視点から人選、チーム編成が行われ、スケジュールが組まれる。この時点で適切な工数の見積もりがされ、適切なチーム体制が整うことが、プロジェクトのアウトプットの質を担保する上で非常に重要である。プロジェクトの提案書を作成するマネジメントレベルのコンサルタントは、過去の経験に基づいて適切な工数を見積もり、資源配分を行うのである。このときに、経験をベースにするものの、想像力を存分に働かせてプランを考えることがカギになる。個人レベルのワークプランでも同様だが、プロジェクトや作業に取り掛かる前に十分に考えておくことが、その後のアウトプットの質を左右する。個人レベルで見れば、ワークライフバランスを保てるかどうかも、この時点でワークプランをどの程度緻密に考えるかにかかっている。

10年以上コンサルティングに従事しているなかで、新卒、中途を問わず、コンサルタントとしてなかなか結果を出せず行き詰まってしまう人も見てきた。人によって理由はさまざまだが、ワークプランニングの能力が未熟、あるいはその重要性に気づかずに、いわゆる「悪循環」に陥ってしまうことが大きな原因の1つだと考えている。

コンサルティング・プロジェクトは通常チームで行われるが、チームで定めた期限に間に合うようにアウトプットを出すことが非常に重視される。ところが、うまくワークプランニングができていないと、想定どおりに進まず、夜遅くまで残っての作業が続いて効率が落ちてしまう、あるいは、アウトプットが目的に合致していない、ということが起こり、それをカバーするためにますます効率が落ちるという悪循環に陥るのである。焦ってやった仕事の質がますます低下することは想像できるだろう。読者の皆さんも、日々何らかの期限が設けられたなかで仕事をされているはずなので、それを前提にワークプランの考え方、立て方について述べていきたい。

作業レベルでのワークプランニング

コンサルティング・プロジェクトと同様、読者の皆さんもチームで業務を遂行する、あるいはサポートしてくれるスタッフの力を借りながら業務を進めるのが一般的だろう。その際には、月単位や週単位でやるべきことを定義するというだけではなく、1日単位に落として実行すべき業務のワークプランを考えることが重要である。月単位や週単位の計画だと、どうしても業務の項目ごとの計画になってしまうが、それを作業レベルの計画にまで落とし込むのである。

通常、コンサルティング・プロジェクトでは、プロジェクト全体の作業項目についてスケジュールを立ててクライアントに提案し、それをベースにプロジェクトが進められる。しかし、チームメンバーの個人個人にとっては、それだけでは不十分である。各チームメンバーが、日々何をするのかについて明確にしなければ、プロジェクトの完遂は不可能と言ってよい。どのような業務にも期限があるが、その期限がわかっていてもそれまでに質の高いアウトプットが出ないことがあるとすれば、その理由の1つは、個人レベルの日々のワークプランへの落とし込みが甘いからだと考えられる。

個人個人が日々の業務を実行するためにどのように時間を使えばよいかのヒントについては後述するが、ここでは、まずはチームとしてのアウトプットを最大化するために、あるいは個人レベルでのアウトプットの質を高めるために、読者の皆さんがどのように作業レベルのワークプランを考えるべきかについて考察したい。

ワークプラン作成の5つのステップ

ワークプランを作成する際には下記の5つのステップがあると考えている(Chart1)。

【Chart 1】ワークプラン作成の5つのステップと重要視点

 

1.目的を考え、目的に合った作業を洗い出す

2.作業ごとの重要度を評価する

3.作業ごとの緊急度を評価する

4.最適な役割分担を決める

5.ワークプランをアップデートする

 

業務には必ず「目的」がある。コンサルティング・プロジェクトで言えば、特定された課題の解決策の立案、仮説の検証等になるが、それらを実行するためにどのような作業が必要なのか、項目を洗い出し、実行プランを立てるわけだ。スタートポイントには常に目的があり、ワークプランの策定・実行・アップデート、どの段階においてもここに立ち戻って考えることが重要である。

若手のコンサルタントは、さまざまな情報の収集、データの分析、分析結果からの意味合いの抽出が主な仕事になるが、時々見られる現象として、やっていて面白い分析や作業に没頭して時間を使ってしまうということがある。本当にその作業は必要なのか、目的に照らしてどのような意味があるのかを見失ってしまうのである。

作業を行う際はもちろん、事前のプランニングの段階で、その「重要度」を評価しておくことが必要である。コンサルタントに限らず、経験を積んでいくとさまざまな作業内容を思いつくだろう。実行しているうちに新しく思いつく作業もあるだろう。そのときに「Must Have」なのか、「Nice to Have」なのかの判断をしなければならない。「Must Have」な作業は、その業務の目的を達成するために絶対に必要なもの、「Nice to Have」な作業は、あれば面白いが、なくても業務の目的は達成できるものと理解してもらえばよいだろう。目的を達成するために本当に必要なことに絞り込んだ上で、1 日単位のワークプランをつくろう。

「緊急度」も重要な視点である。緊急度を検討する際は、期限はもちろんのこと、その業務に他人がかかわるかどうか、実行がどの程度難しいかという視点が重要である。

どのようなことも自分以外の第三者がかかわると思うように事が運ばないことが多いため、他人がかかわる業務については慎重なプランニングが必要だ。

簡単な例として、ある企業に何らかの提案営業をすることを考えてみよう。必要となるステップは、顧客ニーズの検討、提案内容の作成、提案内容についての上司の承認、顧客への提案という流れだ。これをワークプランに落とす際には、顧客ニーズを把握するための情報収集、提案に必要なそのほかの情報の収集、提案内容の検討、提案内容のドキュメントへの落とし込み、上司とのアポ取り、上司による確認、顧客とのアポ取り、といった具体的な作業レベルに落とす。その際に、上司にはどのタイミングで提案内容を見てもらえるか、もし修正がかかった場合には修正する時間はあるか、顧客とのアポは通常どのタイミングで取れるかといった、第三者のスケジュールや都合を考慮した計画が求められる。ついつい、自分自身が手を動かす情報収集や提案内容の作成という作業に目が行きがちだが、リードタイムがかかるものは事前に周到に計画しておかなければならない。

自分やチームにとって難易度が高いと考えられる作業についても同様である。実行が容易なものであればある程度計算どおりに進むものだが、これまでにやったことがないなどの理由で難易度が高いものは、時間が想定以上にかかる可能性が高いし、チーム以外から専門家や上司のサポートが必要になることもあるだろう。これもあらかじめスケジュールに織り込んでおく必要がある。

重要度と緊急度を評価することで、チームあるいは個人単位で実行が必要な作業内容が決まり、スケジュールも決まってくる。このときに読者の皆さんにお願いしたいのは、これまでの経験をベースに、可能な限り想像力を働かせてほしいということである。実際にその1週間なり1カ月の作業を想像し、どこかで引っ掛かってしまい全体のスケジュールが遅れるような要素はないか、全体の進捗のボトルネックになるような作業がないか、最大限の想像力を働かせていただきたいのである。

前述のように、第三者がかかわるようなものが最も危ないが、それ以外にも実行が困難になる要素はないかを検証してほしい。もし自分の経験だけでは検証できないようであれば、上司や周囲の人の意見をもらってもよいだろう。繰り返しになるが、この段階でいかに考えておくかが、業務の質とスピードを担保するだけではなく、個人個人のクオリティ・オブ・ライフにかかわるということを肝に銘じていただければと思う。

自分の得意とする業務こそ部下に任せる

さて、重要度と緊急度という視点で業務を評価し、必要な業務についてスケジュールを立てていくわけだが、チーム内での役割分担、作業分担を検討する際に、非常に重要と考えていることがある。「自分の得意とする業務は、できるだけ自分でやらずに部下にやってもらうよう資源配分する」という視点である。この視点は、専門職として一定の仕事の質とスピードを究極まで上げることを目的としている職務の方は別として、一般的な業務分野でキャリアを積んでいこうとされている方に、特に重要と考えている。

通常、役割分担や時間配分を考えるときには、得意分野や得意な作業をメインに担当したり、つい慣れている作業を優先したりすることが多いだろう。しかしこれはキャリアアップという視点で見たときに必ずしも最適な資源配分とは言えない。これは、マーケティングや営業といった専門分野のことを言っているのではない。読者の皆さんそれぞれの専門分野や職種のなかで、日々の業務をどのように分担していくのかという際の考え方である。

私が「自分の得意業務はできるだけ部下にやってもらう」と言っている理由は3つある。1つ目は、通常自分が得意とする業務は部下もこれからやっていかなければいけない業務であり、会社や部門全体のスキルアップ、レベルアップのためには絶対必要だからだ。

また、部下に自分の得意分野を任せることで自分はより難易度の高い業務にチャレンジでき、スキルアップ、キャリアアップのベースとなろう。この2つ目のポイントが最も重要で、自分ができることだけをやっていては、キャリアアップは不可能であることは読者の皆さんが認識しているとおりだろう。短期的に見ると非効率のような気がするが、自分自身、あるいは会社全体で見ても必要な取り組みだと思う。

3つ目の理由は、自分の得意分野であれば、仮に部下の作業効率が悪かったり、アウトプットの質が低かったりしても指導やリカバリーが容易であるということだ。全体として見てもリスクは低いと考えるべきである。チームや自分のアウトプットの質を維持しながらスキルアップ、キャリアアップもしていくというバランスを考えて資源を配分する上で、1つの考え方として参考にしていただければと思う。

忘れがちなワークプランのアップデート

ワークプランについて、最後に重要なのは、アップデートするということである。コンサルタントにも時々いるが、最初にワークプランをつくったままアップデートをしないと有効性は半減する。業務自体の進捗によって変更するということもあるが、日々環境が変化しているなかで、これまで述べてきた視点をベースにアップデートすることは必須である。コンサルティング・プロジェクトでもよくあることだが、ある仮説を検証するためのワークプランを立てていたが、作業が進捗するにつれてその仮説が成り立たないことが見えてきて、新たな仮説が出てくることがある。その際に古いワークプランに基づいて作業を進めてしまっては、まったく目的に整合しない作業をすることになってしまう。作業が計画どおりに進んでいないときはもちろん、業務の目的が変化したとき、その他の要因も含めて必要に応じてワークプランをアップデートしていかなくてはならない。可能であれば日々アップデートしていただきたいと思う。

日々の時間の使い方

さて、ここまではチームとしてあるいは個人として日々何をどのように実行していくべきかという視点でワークプランの重要性、ワークプランの考え方について解説してきた。最後に、読者の皆さんの日々の時間の使い方について考えてみたい。

読者の皆さんは、通勤電車のなかで何をしているだろうか。本や新聞を読んでいる方もいるだろうし、座って通勤できるならたまった疲労を回復するために、睡眠を取っている方もいるだろう。

私は、読者の皆さんの生産性向上、クオリティ・オブ・ライフ向上のためにも、会社に向かう電車のなかで、その日1日のワークプランを考えることをお勧めしたい。その日にやらなければいけないことを考え、1日のプランニングをするのである。頭のなかで考えても、紙に落としてもよい。その際には、ここまでに述べてきたワークプラン作成のステップならびにポイントを思い出していただきたい。1つひとつの業務が、目的に照らして重要かどうか、業務の難しさ、第三者が関係するかどうかを勘案し、何から取り掛かるべきか。このような視点でやるべきことを評価すれば、おのずと優先順位、時間の使い方が決まってくるだろう。

時間配分という意味での資源配分も重要である。やりやすい仕事から取り組むのがよいか、難しい仕事から先にめどをつけるべきか。ミーティングとミーティングの間の細切れ時間をどう使うかの判断も重要だろう。

そして、1日が終わった後、今度はその日の時間の使い方が最適だったか、ワークプランニングの視点で考えたときにどのような改善が可能かを考えながら家路につくということも有効だろう。気づいたポイントをメモに取り、翌日からの時間の使い方に生かす。あるいは、1日を振り返ってみると、実は目的を達成するために必要になる新たな作業内容があることに気づくこともあるだろう。私は、夜寝るときにベッドのなかで考え事をする習慣があり、思いついたさまざまなことをベッドサイドのメモに書き込んでいる。翌日それを見ながら、チームあるいは自分自身のワークプランをアップデートしていっている。

本稿で解説したポイントに留意しながら適切なワークプランを回し、日々改善していくことがもたらすものは、業務効率の改善やアウトプットの質の向上だけではない。自身のキャリアアップのために、また、ライフスタイルを充実させる上で、とても意味のあることだと信じている。少しでも読者の皆さんのお役に立てるならば幸いである。
 

<プロフィール>
中村 真司 (なかむらしんじ)

東京大学経済学部卒業、カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院経営学修士(MBA)。米国系大手コンサルティング会社、ベンチャー企業等を経て現職。 消費財・小売プラクティスのコアメンバーとして、全社戦略、海外事業戦略、マーケティング戦略などに関するコンサルティングを実施。M&Aや企業提携のサポートも実施している。
 

 

(「Think!」(東洋経済新報社)2012年4月16日号)

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