A.T. カーニーによる日本のスタートアップに関する調査(協力:Google)

日本のスタートアップの現状と今後の展望:足元のスタートアップ市場の活況を、世界に挑むスタートアップの育成につなげるために

世界に挑むスタートアップの育成には、「①ディープテックの先鋭化」、「②ハイリスクな領域での資金の拡充」、「③多様な人材でのチーム作り」が求められている

 

本調査の目的・背景

メルカリが、時価総額約7,000億円で上場するなど、スタートアップによるIPO市場が活況を呈していたり、有名スタートアップ経営者がテレビを始め様々な媒体で華々しく取り上げられたりするなど、昨今国内のスタートアップ界隈が盛り上がってきている。

海外に目を向けると、(足元では弱含みだが)配車サービスのLyftは、時価総額約220億ドル(=2.4兆円)で上場し、その競合であるUberも時価総額約700億ドル(=7.7兆円)を記録するなど、国内のスタートアップとは、別次元の企業価値を実現している。

そこで、A.T. カーニーは、昨今のスタートアップ市場の盛り上がりを踏まえ、世界規模で成長できる日本発のスタートアップを創造・育成するためには何が不足し、各ステークホルダーがどのように行動すべきかを明らかにするために、提言を取りまとめた。

本提言の作成にあたり、A.T. カーニーは、Googleの協力を得て、統計情報・各種公表情報の調査に加え、スタートアップやベンチャーキャピタル(以下、VC)関係者、コーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)や大手企業の事業開発担当者、スタートアップ経営陣などの関係者に数多のインタビューを実施した。

 

足元のスタートアップ市場の活況さ

現時点では、日本のスタートアップへの投資総額は、米国・中国・欧州と比べると、経済力対比で少ないが、近年はスタートアップの調達額は急激に拡大しており、1回で数十億円規模での資金調達することも増えてきている

 また、すでに時価総額100億円を越えるIPOが広がり、未上場でも時価総額100億円を越える企業も一定数存在し、起業家・投資家双方にとって一定のリターンが見込まれる市場になっている。それらの背景には、スタートアップが成長するために必要な構成要素(アイデア・技術、資金、人材、顧客・支援機関等)の充実がある

  • 技術・アイデア:最新のデジタル技術を活用したSaaS系中心の事業化
  • 資金面:金融緩和などによるマネーの絶対量の増加と、CVCや事業会社による直接投資など出し手の多様化による質的な変化
  • 人材面:起業経験者や大企業、コンサルティングファーム出身者など、事業に精通した人材が流入
  • 顧客・支援機関:世界的なアクセラレータの活発な活動。EXIT経験のある起業家がエンジェル投資家として若い世代の企業を支援
  • その他:成長戦略の重要な柱としての政府による支援強化

さらに、業界団体等が中心となり、スタートアップ投資のROIやプロセスの透明性を向上させている。これらの結果、従来は及び腰だった国内の巨大な機関投資家(ゆうちょ銀行・かんぽ生命)や海外VC(DCM等)からの資金流入が拡大している

 

世界に挑むスタートアップの育成に向けて

上述の通り、日本のスタートアップ市場は拡大し、時価総額100億円を超えるスタートアップの数も増加しているが、これまでのところ、国内市場でのミッドサイズのIPOが中心で、その後世界的な企業に成長する例は少ない。背景は以下のとおりと考える

  • 技術・アイデアにおいて、 SaaS系の国内市場向けITサービスなど、相対的に「手堅い」ものが多かったこと
  • ディープテックなど、経済・社会に大きなインパクトを与えうるが短期の出口が「読めない」アイデアに対し、シード段階及びグロース段階での資金が不足していたこと
  • 足元ではグローバル志向が強まりつつあるが、チームの多くは日本人のみで構成され、世界を目指したイノベーションや市場開拓に最適な体制になっていなかったこと

そこで、IPOやM&Aは通過点で、やがて世界的な企業になるようなスタートアップの育成には、『①ディープテックの先鋭化』、『②ハイリスクな領域での資金の拡充』、『③多様な人材でのチーム作り』が必要と提言する

  • 『①ディープテックの先鋭化』:既存の事業モデルの焼き直しや輸入ではなく、大きな経済・社会課題を解決する技術・アイデアの発見・統合・先鋭化
  • 『②ハイリスクな領域での資金の拡充』:具体的な市場や顧客が明確でない段階でのリスクテイクや、中途でのIPOをせずに、じっくりと企業価値を最大化するための中長期的な成長資金の投入
  • 『③多様な人材でのチーム作り』:事業を理解した技術者、起業家、技術に明るい経営人材を、国籍に関係なく集めた最適チームの編成、そのための環境整備

 

執筆者

岸田 雅裕(A.T. カーニー、パートナー)
井上 真(A.T. カーニー、パートナー)
久野 雅志(A.T. カーニー、プリンシパル)
竹内 友夏(A.T. カーニー、マネージャー)

 

また、本提言にあたり、Googleの原邦雄様、西村賢様、久米雅人様、弊社の梅澤高明、後藤治、両氏には多大な貢献を頂いたことに対し、この場を借りて謝意を表したい

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