A.T. カーニー 未来の消費者に関するグローバル調査

未来の消費者像:「物質的な豊かさ」から「つながりや影響力」を重視する時代に

未来のマスマーケットは、信頼、影響力、パーソナライゼーションという3つの原則により成長する

 

小売・消費財企業が直面する新たな現実

 

ユナイテッド航空の乗客がオーバーブッキングを理由に機内から無理やり引きずり出される映像を見た人は多いだろう。そのビデオクリップはあらゆるニュース番組やウェブサイト、とりわけソーシャルメディアで取り上げられた。ビデオを見た人は、その乱暴で異様な事件、ニュース拡散の爆発的なスピード、経営陣の鈍感な反応、あるいは航空会社の市場価値が(後で回復したとはいえ)明らかに大きく低下したことにショックを受けたのではないだろうか。さらには、長い歴史があり信頼されるブランドが、たった一人のビデオ投稿によっていとも簡単に大きく傷ついてしまうと感じたかもしれない。組織はこの事件から様々な教訓を得ることができよう。ただし、最も重要なことの一つは、ある事象が人々の態度や行動をどのように変化させるかを予想する「影響力」モデルを使用して、より優位に立てるようになることだとA.T. カーニーは考えている。

ソーシャルネットワーキングの拡大により、消費者の誰もが放送局になる可能性を秘めている。この変化は、新たな世代間ギャップの出現を物語っている。すなわち、古い世代は物質的な豊かさを重視するが、若い世代は共感や人とのつながりを大切にする。A.T. カーニーは、こうした変化を探り、将来の消費者像とブランドおよび小売業との関係を理解するため、「未来の消費者に関するグローバル調査」を実施した。

消費者が「物質的な豊かさ」ではなく「つながりや影響力」を重視するようになることで、消費パターンのルールが世界中で変わろうとしている

本調査は、人口動態、経済動向、技術動向を精査し、7カ国の7,000人を超える消費者を対象に行った。調査に際しては、単に現在の消費に関する統計分析を行うのではなく、消費の要因としての消費者の行動、個人の価値観、精神的豊かさをより深く理解することを目標とした。重要な点として、「トレンド」を探る調査がおおむね5年後を見ているのに対し、本調査では10年先を予想した。

本レポートでは、この調査から学んだ教訓を解説している。以下はその要約である。

  • 「物質」主義から「影響力」重視へのシフトは、人口動態、価値観の変化、ハイパー・コネクティビティ(人やモノがインターネットを介して常につながること)の止めようのない潮流によって引き起こされ、世界の消費パターンのルールを変えようとしている。
     
  • その結果、将来のマスマーケットは、従来とは根本的に異なる3つの原則、すなわち信頼、影響力、パーソナライゼーション(※注)により成長するだろう。
     
  • 消費財ブランドと小売企業が未来の消費者に訴求することは可能であり、とりわけ新しい情報技術を用いた影響力の行使は、販売促進に有効だ。実際、デジタル化の進んだ世界では、消費者との関係を構築する新しい能力の獲得がかつてなく重要となるだろう。

 

「物質」主義から「影響力」重視へ:3つのポイント

 

20世紀の大半にわたり、マスマーケットとはまず裕福な集団を見つけ、次にそうした消費者を(通常は広告費を投じることで)誘引し、さらには規模を拡大することでコスト削減と利益増大を実現することであった。

 

 

未来の消費者の特性は従来の「物質」モデルを覆すだろう。

若い世代は異なる価値観を持っている。彼らの特性は「何を持っているか」ではなく「何をするか」によって決定づけられ、その消費行動は、消費する商品やサービスに固有の価値ではなく、個人の価値観に左右される。しかも、個々の取引ではなく、信頼に基づく関係を模索する傾向が強まっている。そのため、こうした消費者を引き付けるのに使用するビジネスモデルはもはや、商品の価値と取引の効率性を重視する一本調子なものではなく、小回りの利いた動的なものでなければならない。マーケティングはかつて大衆(特に富裕層)を対象とするテレビに注目していたが、個々の消費者と適切な場所とタイミングで出会うためには、マーケティングは従来よりもはるかに個人に焦点を当てたものにならざるを得ない。

したがって、消費財ブランドと小売企業は、均一な集団が生みだす大きなトレンドを観察するのではなく、消費者の小さな集団が発する小さなシグナルを検知して反応するための方法を理解する必要がある。

こうした消費者行動の変化はなぜ起きているのか。本調査から今後10年間に起きるであろう3つのトレンドを予想した。

 

1.人口動態の変化:世代と経済の主要トレンド

2027年、市場には6つの世代の消費者が存在する(図表2)。そのうちの2つの世代、すなわち「沈黙の世代」(1928~1945年生まれ)と、マーケッターがいう「アルファ世代」(2017年以降生まれ)が2027年時点で及ぼす購買活動への影響は限定的だ。沈黙の世代の最年少者はその時点で82歳であり、アルファ世代の最年長者は10歳に過ぎないからだ。つまり、商業的に大きな影響力を持つのは、「ベビーブーマー」(1946~1964年生まれ)、「ジェネレーションX」(1965~1980年生まれ)、「ミレニアル世代」(1981~1997年生まれ)、「ジェネレーションZ」(1998~2016年生まれ)の4つの世代である。

今後10年間における人口動態上の大きな変化の一つは、ジェネレーションZが成人を迎えることだ。2027年には、世界の人口の30%がジェネレーションZとなり、うち15億人は成人している。ただし、ジェネレーションZは世界中で経済情勢と文化的な環境変化に対峙することになる。例えば、ドイツや日本などでは高齢化と人口減少が進行し、そのことが医療と福祉に関するジェネレーションZの負担を増大させている。対照的に、インドや中国などではジェネレーションZが全人口に占める比率が大きい。一方、米国などでは人種の多様化がいっそう進み、成長は主にマイノリティーによって牽引される。米国と欧州では、特に世帯構造の点で伝統が色褪せつつある。当社が調査した7カ国のすべてで都市化が進行し、日本を除くすべての国で所得格差が拡大している。

 

 

2.価値観の変化:未来の消費者にとって重要なことは何か

上記のように定義した6つの世代は、それぞれが異なる地域または世界規模で起こる事象によって形作られ、いずれも固有の特徴を備えている。例えば、進化するテクノロジーはジェネレーションZに影響を及ぼしており、それは地理的条件と無関係に進行している。ジェネレーションZは国や社会の違いによらず、デジタル・テクノロジーに囲まれて育っている。ジェネレーションZがこうした普及したテクノロジーをどのように使用し、テクノロジーによってどのように形作られているかをみれば、ジェネレーションZが、自国の他の世代の消費者よりも、世界の他の国・地域のジェネレーションZとより多くの点で共通していることが分かる。

本調査は、そうしたデジタル・テクノロジー・プラットフォームによって表現され強調されるジェネレーションZに共通する、固有の価値観を見出した(図表3)。ミレニアル世代がパーソナル・テクノロジーやデジタル・プラットフォーム登場以前の世界をまだ覚えているのに対し、最年長者がGoogleの創業と同じ年に生まれたジェネレーションZは、真のデジタルネイティブである。ジェネレーションZはミレニアル世代に比べ、よりプライベートな形でコンテンツを共有し、Snapchat(スマートフォン同士で写真・動画を共有するサービス)のような小規模で閉鎖的なコミュニティでの直接的なメッセージ交換を好む。これに対し、ミレニアル世代はソーシャルメディアを使ってより広い範囲でコンテンツを共有している。

同様に、ジェネレーションZは人種や性の違いを超越した初めての世代で、同性婚が当たり前になった時代を生きている。こうした寛容さから、「クール(ひたすら格好いい)」という大きなトレンドに追随してきたミレニアル世代とは対照的に、ジェネレーションZは「ユニークさが新しいクールである」をモットーとしている。さらに、ジェネレーションZの消費者は、そうしたクールさ(個性、およびアイデンティティに対する独自の感覚)を表現するツールとして商品を利用する。

一部の国のジェネレーションZは景気後退期に育ち、両親が失業するのを目の当たりにした可能性がある。そのため、年長の世代に比べ責任感が強い。例えば本調査では、ジェネレーションZの60%がアルバイトをしながら学校に通っていると述べている。この世代は教育についても異なる考えを持っている。それは「大量の情報に無料でアクセスできるので、自分たちにとって世界が教室である」というものだ。また、起業志向も強い。実際、他の世代がスポーツ界や音楽界のスターを尊敬するのに対し、ジェネレーションZの消費者はFacebookやTwitter、Snapchatといった革新的ビジネスの創業者に憧れる。彼らにとって起業家精神は社会の重要な構成要素であり、ジェネレーションZの偉大なロールモデルは、教育活動家でノーベル賞を受賞した20歳のパキスタン人女性、マララ・ユスフザイ氏である。同氏は、勇気と社会的責任を併せ持つ象徴的な存在だ。

こうした価値観を理解することは、消費財ブランドと小売企業にとって非常に重要である。変革の先頭に立つ存在となるのはジェネレーションZであるからだ。一般的に言って、より若い世代の消費行動は多くの場合、年上世代のそれに影響を及ぼす。特にジェネレーションZの場合、ハイパー・コネクティビティを活用して、これまで以上に広範かつ容易にその影響を及ぼす。

 

3.ハイパー・コネクティビティ:「影響力」モデルの登場

本調査では、ハイパー・コネクティビティの増大が確認された。例えば回答者の44%がソーシャルメディアに積極的に参加しており、中でも中国とインドでその割合が高い。A.T. カーニーの「インターネットと消費者の“つながり”に関する調査」(原題:Connected Consumers Are Not Created Equal: A Global Perspective)で論じたように、人々が継続的につながることによって、広い範囲に、時として不均一な影響を世界中に及ぼしている。

驚くにはあたらないが、若い世代は散発的な接続ではなく常時接続をする人の割合が高く、いつでもどこでも接続できるスマートフォンを保有する人の割合が上の世代よりずっと高いことが本調査から明らかになった。実際、散発的な接続を象徴するデバイスであるPCを利用する人の割合は、上の世代の消費者に比べて小さい。

違いを生むのはスマートフォンのテクノロジーそのものではなく、それが提供するハイパー・コネクティビティであることに注目したい。すべての人が誰かと常につながる状態が到来すれば、「影響力」モデルが登場する条件が整うことになる。同モデル下では、より大きな力を持つようになった個人の声を通じて市場が動く可能性もある。こうしたハイパー・コネクティビティが人口動態の変化および価値観の変化と結びついたとき、未来の消費者像は大きく変わることになる。

 

マスマーケットの形成要因:3つの原則

 

本調査は、消費者の個人的特性や人との交流方法がどのように変化し続けるのかを明らかにしている。一方で、そうした変化が、従来の市場を左右していた物質的豊かさ、広告、規模という3つの原則をどのように覆す可能性があるかについても念入りに調べた。その結果、根本的に異なる3つの原則が将来の市場を動かすことが分かった。

 

1.信頼

ブランドとは、アップルの共同創業者で元CEOの故スティーブ・ジョブズが指摘したように、簡単に言えば信頼である。現在の消費者は何百万もの人に瞬時に発信する能力を持ち、それが信頼をコントロールする方法を変化させた。信頼の構築と維持は消費財ブランドと小売企業にとって極めて重要なものとなっている。

本調査から、消費者が大手企業やブランドへの信頼をすでに失っていることが明らかになり、これは特に欧米で顕著であった(図表4)。調査対象の欧米4カ国の場合、大手企業やブランドへの信頼がほとんどまたは全くないと回答した消費者が50%を超えた。中国とインドでは、品質と「クールさ」を理由に大手ブランドへの信頼感が相対的に高かったものの、すべての調査対象国でわずか5年前よりも信頼が低下した。この傾向は続くものと見ており、各ブランドにとって極めて重要な課題となろう。

信頼の低下は不可避ではない。例えばアップルは一貫して高性能な商品を提供し、厳格なデザイン哲学に忠実であり続け、さらには2016年に消費者プライバシーを巡る米国連邦捜査局(FBI)との対立を通じて信頼を構築した。言い換えると、今後は商品の品質やサプライチェーンの統一性だけでは消費者の信頼を獲得できないということでもある。図表4が示すように、若い世代は環境に優しいブランドや社会問題に高い関心を示すブランドを探すことに積極的だ。ジェネレーションZは、そうした商品であればプレミアムを払っても構わないとさえ述べている。

 

 

2.影響力

一部の消費者が物質的に豊かであるのと同様、影響力が他の人より大きい消費者も存在する。影響力は、例えばオーバーブッキングのフライトに関する注目度の高いビデオを投稿するといった特異な性質によって生じる場合もあるが、大半のインフルエンサーは自らの知識や名声に基づいて地位を築き、維持している。例えば、現在最も影響力のあるインフルエンサーは、ソーシャルメディアで数多くのフォロワーを持つスポーツ界やポップカルチャー界のスターに多い。

未来のインフルエンサーは、よりセグメント化される可能性が高い。例えばファッション感覚を備えたブロガーやビデオ・ブロガー、地域のラッパー、DJ、または食通などである。こうしたマイクロ・インフルエンサー(数千人のフォロワーを持ち、自分のコミュニティの中で強い影響力を持つ個人のインフルエンサー)はマクロ・インフルエンサー(数百万人のフォロワーを持つ著名人)より強い影響力を持つことがある。マイクロ・インフルエンサーはフォロワーとの関係構築に積極的かつ真剣に取り組むため、より効果的に信頼を構築できるからだ。

こうしたトレンドはすでに現れている。本調査では、例えばブロガーやビデオ・ブロガーがより若い世代に影響力を伸ばしていることが示されている(図表5)。消費財ブランドや小売企業はすでにマイクロおよびマクロ・インフルエンサーの両方を自らの利益につながるように活用している。例えばYves Sant Laurentとadidasは、インフルエンサーを見出して連携し、その達成度を測定する取り組みに成功したことですでに知られている。

インフルエンサー戦略の設計にあたり、消費財ブランドは詳細な顧客ターゲティングが可能だ。かつて、顧客ターゲティングは単に年齢や職業その他の特性を意味していた。しかし現在、ビッグデータによりマーケターは、態度、意見、はっきりとは表現されないような性格に基づく興味、ライフスタイル、価値観を、正確に狙うことが可能になった。そうした心理学により、顧客ターゲティングはこれまでよりもはるかに小さなセグメント、おそらく個々のソーシャルネットワークのレベルさえも狙えるようになっている。消費財ブランドや小売企業は、あるセグメントのインフルエンサー、およびメッセージの流れのスピードや特徴を把握することが可能だ。

 

3.パーソナライゼーション

ビッグデータは影響力を理解するうえで貴重であるが、パーソナライゼーション(※注)を解き明かすことにおいてさらに価値が高い。(オンラインおよびオフラインでの)購買履歴や閲覧履歴からソーシャルメディア活動への参加に至るまで、どんな個人に関しても膨大な量のデータが存在する。生活の少なくとも1つの断面を(例えば活動量計「Fitbit」を使用して)追跡する人の割合は、ジェネレーションZとミレニアル世代ではベビーブーマーの2倍に上る。この両世代では、データを使って自己改善に取り組む自己定量化(Quantified Self)の概念を支持する人の割合が高く、データを共有することが自己改善に役立つ(見返りがある)のであれば、進んでそうする傾向がある(図表6)。

※注:パーソナライゼーション:従来型のマーケティングが特定の集団(セグメント)を対象としていたのに対し、個人にフォーカスあてること。または個人向けの商品・サービスのカスタマイゼーション

 

こうした消費者は見返りに何を望むのだろうか。比較的多いのが商品に関する助言である。ニーズに合った食品、自身のライフスタイルに合った衣服、さらには過去の購買行動に基づく商品を提案してもらうというものだ。したがって、データは顧客の関与と経験を改善する「新種の通貨」となっている。データはパーソナライゼーション実現に必要不可欠である。

留意すべきは、ここで言うパーソナライゼーションとは商品の個人向けカスタマイズをはるかに超え、オンライン、アプリ、その他の個人向けサービスにおけるコンテンツ最適化など「経験のパーソナライゼーション」でもあることだ。例えば、L'Oréalの仮想メイクアップ・ツールでは、利用者が仮想の商品サンプルを取り換えながらメイクアップをバーチャルで試せるという、「突っ込んだ」サービスを実現している。ブランドはパーソナライゼーションを、従来のように単に規模のメリットを引き出すための手法としてではなく、個々の消費者とコミュニケーションを取るための手法として広く捉える必要がある。

 

消費者向けブランドと小売企業の今後の課題は何か:成功への7つのステップ

 

ブランドと小売企業の存続がマスマーケティングと伝統的なブランドセオリーに依存していた過去においては、断片化(fragmentation)は忌み嫌われていた。しかし本調査は、消費財ブランドと小売企業は、将来的に断片化を積極的に受け入れる必要があることを示している。本調査は企業にとって重要な7つの行動指針を明らかにしている。

 

ステップ1:顧客との関係構築に積極的に投資する

消費財ブランドにとって、顧客への接近、すなわち消費者と直接つながること(direct-to-consumer、D2C)は必要不可欠となろう。ブランドは本格的で親密なD2Cデジタル・コミュニティを構築することにより、個々の消費者に関する豊かな知見を集めることが可能になる。アプリを開発したりソーシャルメディアに投稿したりするだけでは不十分で、消費者に適切なサービスやコンテンツを提供する、奥行きの深い本物のコミュニティをつくることを目標としなければならない。もちろん、小売企業やその他の既存の流通パートナーとの摩擦に対処するうえで克服すべき課題はある。だが目的はデータだ。データは、消費者の真のニーズに合わせて商品開発とマーケティングをカスタム化に用いる重要資産である。

 

ステップ2:消費者セグメンテーション・モデルを小さな集団に適応させる

人口動態に基づく従来の顧客セグメンテーション手法は時代遅れだ。将来は、消費者が自らの選択で集団に属したり集団から離脱したりするようになる。企業は集団に関する考え方を再定義する必要がある。似通った外部特性を基に分類する手法は捨て、個々の消費者がどのような価値観を重視して意思決定を行っているかに目を向ける。

企業がこうした変化を成し遂げるには、消費者行動の変化を個人レベルで理解し、さらに先進的な手法を駆使して、台頭するサブグループに共通のニーズや願望を把握しなければならない。ある意味、これは個人レベルのマーケティングである。データはこの目標を達成するためのツールを提供する。

消費者に近づくことは必要不可欠だ。ブランドは消費者と直接つながるデジタル・コミュニティを構築することで、個々の消費者の洞察を得ることができる

 

ステップ3:様々な規模の集団に合わせてカスタム化されたソリューションを提供する

消費者が期待するパーソナライゼーションのレベルは、自分の運動能力にテンポを合わせたワークアウト用プレイリストから、感情の反応を測定する装置に至るまで、増える一方である。"大規模なパーソナライゼーション"という言葉は矛盾した表現に聞こえるかもしれない。なぜなら、多数の個人にカスタマイズされた商品や体験を大規模に開発・運営することと、事業の経済性を両立させるのは、トレードオフの関係にあるからだ。しかし我々はそうした目標の達成は可能であり、そのための道筋には次のような策が有効と考える。

  • 個人に合わせた経験を拡大可能な方法で提供するため、似通った消費者をグループ分けし、訴求する商品やサービスをグループ単位で特定できるようにする
     
  • 効率的にカスタマイズするため、グループごとにパーソナライゼーションと共通項を仕分ける
     
  • コミュニティ感覚を醸成するため、メンバーシップとイベントを用いたマーケティングに移行する

 

ステップ4:マーケティング予算をソーシャルメディアの現実に合わせて調整する

すべてがつながるハイパー・コネクティビティの世界では、従来型のマーケティング活動の多くは無意味になる。したがって、予算だけでなく考え方も変えなければならない。マーケティング効率を測定する重要指標として、ROPO(Research Online Purchase Offline:オンラインで調べてオフラインで購入すること)に関する指数や直帰率(1ページ見ただけでそのサイトを去っていくウェブ閲覧者の割合)、ウェブサイトへのアクセス数などを導入する。こうした見える化は、企業が消費者グループごとのマーケティング・ミックスを考えるうえで役立つだろう。また、消費財ブランドと小売企業は瞬発力を養う必要がある。すなわち、進化するトレンドや一夜で急増する需要にタイムリーに対応できなければならない。

 

ステップ5:コミュニティ構築にマイクロ・インフルエンサーを引き込む

当然ながら、「影響力」モデルではインフルエンサーとの協力が極めて重要だ。前述したように、マイクロ・インフルエンサーは、ブランドを一緒に育むことのできる極めて貴重な代理人となり得るからだ。したがって、消費財ブランドはインフルエンサーの活用を体系化することが求められる。

  • 適切なインフルエンサーを特定し、インフルエンサーと連携する方法を学ぶ
  • 量でなく質を追求する:ソーシャルネットワークへのコミット、ゴールと価値観の合致
  • ブランドへの情熱を育むコミュニティを長期の視座で構築する

組織は機動性とスピードを養い、事業モデルを常に進化させなければならない

ステップ6:信頼を築き、提供価値を先鋭化する

商品へのニーズを把握するだけでは消費者に近づくことはできない。消費者の価値観と倫理的な懸念を理解する必要があり、さらにはそうした懸念を反映させるため、問題に対する姿勢を明確にし、顧客がそうした価値観に対する実績を陰で評価し観察し続けられるようにする必要がある(ソーシャルメディアはこの点で有用である)。透明性が信頼を育み、特にジェネレーションZの場合、信頼がより有利なプレミアム価格(企業による好ましい行動に対して8%まで上乗せ)を設定する機会を創出しうる。

 

ステップ7:ビジネスモデルのギャップを埋める

地位を確立したブランドが、物質的豊かさに基づく現在の収益モデルと今後到来する「影響力」モデルとのギャップを埋めるのは容易でない。現在の収益源と潜在的な収益源の間でリソースと労力のバランスを取る必要があるからだ。組織は、機動性とスピードを養い、事業モデルを常に進化させなければならない。

実現は容易ではないが、不可能ではない。確立されたブランドは、組織再編や事業の売却または買収を通じてブランド・ポートフォリオの革新に注力しなければならない。Victoria's Secretは主要ブランドに加えて新ブランドのPinkを立ち上げて若い世代に対応した。一方Burberryは、Prorsum、London、Britという紛らわしいブランドをBurberryに統一して、顧客行動に合わせたサービス改善につなげた。あるいは、確固たる地位を築いている世界的な化粧品ブランドによる買収がこのところ活発化しており、Hourglass(Unileverが2017年に買収)、Two FacedとBECCA(Estée Lauder Companiesが2016年に買収)、およびIT Cosmetics( L'Oréalが2016年に買収、同社にとって8年ぶりの大型買収となった)など若い消費者への訴求力の強い「インディーズ・ブランド」(地道にファンを拡大してきたブランド。主に個人が発祥)が買収されていることも注目に値する。重要なのは、この2つのモデルのギャップを埋めることだ。Blockbusterが自らの収益モデルを変化する消費者ニーズに適合できず、結果的にNetflixに敗北したことを忘れてはならない。創業から20年が経つAmazonでさえ「毎日が最初の一歩を踏み出す日」を企業理念に掲げている。

新たな独立ブランドに投資しているにせよ、新たなビジネスモデルや消費者セグメントに進出しようとしているにせよ、それは本物の挑戦といえる。それを続けることによってのみ、遠い未来にわたって消費者ニーズを満たす能力を育むことができるのだ。

 

■調査概要

「未来の消費者に関するグローバル調査」は、世界7カ国からそれぞれ約1,000人(合計7,000人超)の均等に分布する消費者を対象に、2017年5月に実施された。対象7カ国は、消費者の観点からみて3つの主要な地域(米州、欧州、アジア)の代表国であり、若年世代の台頭が著しい国(インド、中国)、経済面で高齢化に直面している国(日本、ドイツ)、強力な消費者基盤を有し、全体的な人口動態と経済の変化を観察する事例となる欧米諸国(米国、英国、フランス)の観点から選んだ。

回答者は、各国における国勢調査人口基準に基づいて選択した(下図参照)。調査対象者の年齢分布は、ジェネレーションZ(18~19歳)を20%含めるなど、若年層に重点を置いた。男性と女性はほぼ同数とし、各国における所得別の構成比は国勢調査に応じた割合に設定した。

 

 
執筆者
Dean Hillier パートナー(トロント)
Mirko Warschun パートナー(ミュンヘン)
Imran Dassu パートナー(ロンドン)
Natalie Shield コンサルタント(トロント)

執筆者は以下の方々による本調査への多大な貢献に対して謝意を表したい。Hana Ben-Shabat (米国)、Geir Olsen(英国)、Pascal Armoudom(フランス)、後藤治(日本)、Debashish Mukherjee(インド)、Sherri He(中国)、Fahd Hajji(ドイツ)

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